微分

Posted by Whale Fall on November 26, 2019

概要

  1. 導関数の定義
  2. 微分

導関数の定義

ある区間で定義された独立変数$x$の関数$y=f(x)$について、$x,x_1$に対応する関数の値をそれぞれ$y,y_1$とします。このとき とおくと、区間$[x, x_1]$の間における関数$y$の平均変化率は と表すことができます。伝統的に$h = \Delta x$とおいて、この極限値 が存在するとき、関数$y=f(x)$は点$x$において微分可能であるといいます。また、ある区間内の任意の点$x$において$f(x)$が微分可能ならば、$f(x)$はその区間において微分可能であるといいます。$f(x)$がある区間において微分可能であるとき、極限値$\frac{dy}{dx}$は$x$の関数です。その関数を$f(x)$の導関数といい$f’(x)$で表します。他にも など様々な表記があります。

微分と微分商

独立変数$x$の関数$y=f(x)$の導関数$f’(x)$が存在すると仮定します。導関数が存在しなければいまの議題である「$\frac{dy}{dx}$を商として扱えるかどうか」はナンセンスなのでこの仮定は認めてください。このとき が成立するので、極限をとる前ととった後での誤差を、$x$と$\Delta x$に依存する関数$\varepsilon(x, \Delta x)$を用いて と書けます。このとき であり、$(1)$式を成り立たせるためには$\Delta x \to 0$のとき$\varepsilon(x, \Delta x) \to 0$でなければなりません。つまり極限をとる前の値は極限値から$\varepsilon(x, \Delta x)$だけズレており、極限をとるとそのズレは消失する($0$に収束する)ことを主張しています。

$(3)$式の両辺に$\Delta x$をかけると となります。この式について$(4)$式の両辺で$\Delta x \to 0$の極限をとると、第1項は$f’(x) \times \Delta x \to (定数) \times 0$で、第2項は$\varepsilon(x, \Delta x) \times \Delta x \to 0 \times 0$なので、直感的になんとなく第2項のほうが早く$0$に潰れてしまいそうだと気づきます。

ここで思い切って と定義し、これを$y$の微分と呼ぶことにします(注:$y$の導関数とは別物です。導関数に$\Delta x$がかかっています)。$dy$は$\Delta y$からちょうど$\varepsilon(x, \Delta x)\Delta x$だけズレており、$\Delta y$とは別物であることに注意してください。この定義にしたがって$dx$も計算します。

注意したいのは$x$はいまのところ独立変数であって、関数ではないということです。独立変数$x$はそれ自身に恒等関数$\mathrm{id}$を適用したものと一致するため、関数$x=\mathrm{id}(x)$を定義する、といってもいいのですが、あまりにも紛らわしいためいまは関数$t = g(x) = x$を考えて$dt$を計算することにします。この場合は$dy$と異なり具体的に導関数$g’(x)=1$がもとまるため、 と計算できます。文字$t$は単にわかりやすさのために$x$を書き直したものであったことを思い出せば、 となります。

以上の議論によって$dx, dy$について、それぞれ具体的な形で表すことができたことになります。実際に$(7)$式を$(5)$式に代入すれば となり、この両辺を$dx$で割れば となって導関数に一致します。これで記号法$\frac{dy}{dx}$には「$y$の微分$dy$を$x$の微分$dx$で割った商」という意味付けがなされました。なんだ、結局割り算だったんですね。この意味合いを反映して$\frac{dy}{dx}$は微分商[^1]と呼ばれることもあります。